2008 Fiscal Year Annual Research Report
強い電子求引性配位子を利用する含フッ素官能基の触媒的クロスカップリング反応の開発
Project/Area Number |
20550099
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
是永 敏伸 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 助教 (70335579)
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Keywords | 還元的脱離 / 支持配位子 / ホスフィン / クロスカップリング反応 / トリフルオロメチル基 / フッ素化芳香環 |
Research Abstract |
本研究では、触媒量の金属触媒を用い、実用に耐える効率的なクロスカップリング反応による含フッ素官能基の芳香環への導入法の開発を行う事を目的とし、トリフルオロメチル基(CF_3基)と芳香環の触媒的クロスカップリング反応の開発を第一目標としている。しかし本研究では、単に触媒候補化合物のランダムスクリーニングを行うのではなく、触媒サイクルの各段階におけるメカニズムの詳細な調査を行い、支持配位子の電子的・立体的効果を明らかにしながら検討を行う事を研究指針としているため、まず、CF_3基と芳香環の触媒的クロスカップリング反応で最も進行しにくいと考えられる還元的脱離の触媒過程に関する一般的な知見を得る事にした。還元的脱離反応では、支持配位子の立体効果や電子的効果により加速されている事が知られている。特に支持配位子の立体効果は10^3以上の加速効果が認められているが、配位子の電子的効果は比較的影響が少ないとされており系統的研究はなされていない。そこで、配位子の電子的効果による還元的脱離反応の知見を得る事にした。 ジホスフィン配位子DPPE(Ph_2PCH_2CH_2PPh_2)のリン上の芳香環部分にフッ素置換基を導入しフッ素の数を変化させる事で、さまざまな電子状態のジホスフィン配位子群を合成した。これらジホスフィン配位子(P-P)を白金錯体の支持配位子として用い[(P-P)PtPh2]錯体からのビフェニルの還元的脱離反応を行い各ジホスフィン配位子に対する反応速度定数を求めた。その結果、(C_6F_5基を有する)DFPPEを用いた反応では、最も遅いDPPEを用いた場合よりも約1200倍もの反応加速効果がみられ、支持配位子の電子的効果によっても立体効果に匹敵しうる反応加速が可能である事を見出した。本成果は、次に検討を予定している困難なCF_3基の還元的脱離反応に対して極めて有効な知見であると考えられる。
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