2009 Fiscal Year Annual Research Report
強い電子求引性配位子を利用する含フッ素官能基の触媒的クロスカップリング反応の開発
Project/Area Number |
20550099
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
是永 敏伸 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 助教 (70335579)
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Keywords | 還元的脱離反応 / 電子不足配位子 / 含フッ素配位子 / ジホスフィン / 配位子効果 / 反結合性軌道 / 分子軌道計算 |
Research Abstract |
本研究では、金属触媒による効率的なクロスカップリング反応による含フッ素官能基の芳香環への導入法の開発を行う事を目的とし、トリフルオロメチル基(CF_3基)と芳香環の触媒的クロスカップリング反応の開発を第一目標としている。本研究では、触媒サイクルの各段階におけるメカニズムの詳細な調査を行い、支持配位子の電子的・立体的効果を明らかにしながら検討を行う事を研究指針としているため、昨年に引き続き、CF_3基と芳香環の触媒的クロスカップリング反応で最も進行しにくいと考えられる還元的脱離の触媒過程に関する一般的な知見を得る事にした。本年度は主に還元的脱離の実験および理論計算による電子求引性配位子の効果の解明に関する研究を行い、結論を得た。 ジホスフィン配位子DPPE(Ph_2PCH_2CH_2PPh_2)のリン上の芳香環部分にフッ素置換基を有する、電子不足な電子求引性ジホスフィン配位子の還元的脱離反応における配位子加速効果を解釈するため、いくつかの含フッ素ジホスフィン配位子(P-P)類縁体を白金錯体の支持配位子として用い[(P-P)PtPh_2]錯体からのビフェニルの還元的脱離反応を行った。各ジホスフィン配位子を用いた場合の反応速度定数を80-100℃の範囲で求め、そこから活性化エントロピー・エンタルピーを算出した。その結果、ジホスフィン上の芳香環の2,6位にフッ素のあるものと無いものの場合ではそれぞれ活性化エントロピーの傾向が異なることから、これらの系列間で構造上の違いがあると考えられた。そこで分子軌道計算によりこれら化合物および遷移状態の最安定配座・エネルギーを求め、実験により求めた活性化エンタルピーとの相関をとってみたところ、(1)ジホスフィン上の芳香環の2,6位にフッ素のあるものと無いものの場合ではコンフォメーションが異なり反応速度に影響を与えること、(2)電子不足配位子による還元的脱離反応加速効果は、電子不足配位子が遷移状態においてP-Pt反結合性軌道の不安定化を和らげるためとわかった。
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Research Products
(2 results)