2009 Fiscal Year Annual Research Report
キラルなケイ素エノラートの触媒的発生法:直接的不斉触媒反応の開発
Project/Area Number |
20550101
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
畠中 康夫 Osaka City University, 大学院・工学研究科, 教授 (80344117)
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Keywords | 触媒的不斉マンニッヒ反応 / キラルケイ素ルイス酸 / キラルケイ素エノラート |
Research Abstract |
キラルなアリルシランと超強酸であるトリフルイミドと反応させることで発生させたキラルケイ素ルイス酸の存在下、窒素上に種々の置換基を持つイミンとα位に水素をもつケトンおよび塩基であるジイソプロピルアミンを反応させたところ、47% ee前後の鏡像体過剰率で、マンニッヒ反応性生物を得た。この反応は、ケイ素ルイス酸触媒量、および塩基およびイミンの量比に大きく影響されることから、キラルケイ素ルイス酸とカルボニル化合物から生じたキラルケイ素エノラートが、キラルケイ素ルイス酸に配位、活性化されたイミンと反応することで進行する重複不斉誘導型の反応であることを明らかにした。重複不斉誘導では、光学活性種のミスマッチングの問題が生じるので、高いエナンチオ選択性は期待できない。そこで、アミン塩基を用いずに、キラルケイ素ルイス酸触媒にカルボニル化合物を配位・活性化し、基質であるイミンによるα位水素を引き抜かせることを試みた。この方法によると、キラルケイ素エノラートが発生するとともに、求核反応に対し活性化されたイミニウムイオンが生じるので、重複不斉誘導型の反応が起こる可能性がない。この条件下で、窒素上に種々の置換基を持つイミンの反応性を検討したところ、P-トルエンスルホニル基をもつイミンが最も高い収率でマンニッヒ反応性生物を与えることが分かった。この反応は、キラルケイ素エノラートが分子間的にイミニウムイオンと付加反応するものと考えられる。置換基をもたない光学活性ビナワチル配位子を有するケイ素ルイス酸を用いて反応をおこなったところ、マンニッヒ反応性生物を75%収率で得たが、エナンチオ選択性は認められなかった。光学活性ビナフチル配位子の3,3'位に嵩だかい置換基を導入すると、エナンチオ選択性が向上することが認められた。 この結果をもとに、現在、ケイ素上の光学活性配位の構造が反応のエナンチオ選択性に与える影響を調べている。反応の適用半が広く、有機合成上重要な反応剤であるケイ素エノラートを、触媒的に生成するという画期的な結果であるといえる。
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