2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規なカルベン配位子を有する金属錯体の合成と不斉触媒反応への利用
Project/Area Number |
20550103
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
坂口 聡 Kansai University, 化学生命工学部, 准教授 (50278602)
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Keywords | 含窒素複素環式カルベン / 遷移金属触媒反応 / 不斉触媒反応 / アニオン性アミデート錯体 / 配位化学 / 酸化的Heck反応 / 不斉共役付加反応 / 立体選択性の逆転 |
Research Abstract |
生命科学や材料科学分野において、キラル化合物の重要性が増加している。遷移金属錯体を触媒に用いる不斉合成反応は、現代有機合成化学の主軸の一つとなっているが、不斉触媒反応の成功には、中心金属への配位を精密に制御できる不斉配位子のデザインおよび配位様式のプログラムが鍵となる。含窒素複素環式カルベン(NHC)は、強いs-ドナー性を持ち、その前駆体の合成ならびにキラリティーを与える修飾が容易に行えるという特徴を持っている。 本研究では、従来に報告例のなかった新規なキラルNHCの前駆体であるアゾリウム塩を、アミノ酸由来のβ-アミノアルコールを出発原料として用いることで、極めて効率よく合成できるルートを確立した。これにより、天然に存在する様々なアミノ酸を不斉源として利用でき、一連のキラル配位子の調製が可能になった。得られたアゾリウム塩は、酸化銀との反応で、対応するNHC-Ag錯体へほぼ定量的な収率で変換できた。また、AgからPdへの配位子交換反応を利用して、その不斉中心に様々な置換基を有するアニオン性アミデートNHC-Pd錯体の合成にも成功し、その構造の詳細をX線結晶構造解析により明らかにした。 さらに、本研究で開発したキラルNHC化合物は不斉触媒反応における配位子として機能することを見出した。すなわち、従来その実現が困難とされてきたPd触媒による鎖状アルケンの酸化的分子間不斉Heck型反応が、極めて高い立体選択性で進行することを明らかにした。また、Cu触媒によるエナンチオ選択的共役付加反応の開発にも成功した。同一の不斉配位子を利用する共役付加反応において、用いるCu触媒前駆体の種類を変えるだけで、生成物の立体化学が逆転することを見出し、これにより、両エナンチオマーの作り分けが可能な新手法を提供することができた。これらの結果は、不斉触媒反応の分野において世界で初めての例となる。
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Research Products
(18 results)