2010 Fiscal Year Annual Research Report
応力下における高分子のin-situ NMR法による運動状態解析法の開発
Project/Area Number |
20550106
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山延 健 群馬大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40183983)
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Keywords | NMR / 高分子 / in-situ / 運動状態解析 |
Research Abstract |
1.赤外線照射による局所温度制御プローブによるポリエチレンテレフタラートの溶融延伸時の分子運動性の解析 赤外線照射による局所温度制御プローブ用い、ポリエチレンテレフタラートの延伸時における構造変化、運動所帯の変化を観測した。ポリエチレンテレフタラートでは延伸に伴い、ポリプロピレンと同様に配向が進むことがわかった。しかし、延伸温度がTgより少し高い温度であり、本質的には分子運動は活発でないため配向結晶化による急激な運動の束縛は観測されなかった.ポリプロピレンの場合には分子鎖の絡み合いによって応力の伝達が行われ配向が起こるが、ポリエチレンテレフタラートの場合には融点よりかなり低温なため、分子間相互作用が熱エネルギーに比べて十分に強い状態での延伸であり、配向機構が異なることがわかった。 2.in-situ運動状態解析手法の開発 これまでのMR緩和時間の解析は得られた信号を指数関数またはガウス関数による減衰を仮定して、信号のフィティングを行い、それから強度と緩和時間を求めていた。多成分存在する場合には強度と緩和時間の両方を考慮しながら運動状態を議論する必要があり、緩和時間測定になれた研究者でなければしばしば、誤った解釈をしてしまいがちな測定法である。しかし、パルスNNRによる緩和時間測定は高分子の物理的性質と密接に関連しており、本研究で開発した信号自体の強度をリアルタイムに数値化する方法を開発することができれば、真の意味でNMRによるin-situ測定が可能になる。これを確立するためにフェノール樹脂の硬化過程に適用した。フェノール樹脂は約150℃で硬化反応が進行する。硬化の程度は樹脂の安定性に影響し、硬化が不十分であると高温で分解が促進されることが知られている。硬化の度合いは硬化温度での運動状態に反映されるはずであり、MRの信号を用いると硬化の程度の良い目安になるはずである。そこで、パルスNMRから得られる信号(FID)の面積を運動状態の指標とすることを提案した。これに対して、FIDの面積の理論的考察からFIDの面積が横緩和時間とその成分の強度の積で表すことができることを証明した。そして、フェノール樹脂の運動状態の解析に有用であることを明らかにした。
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