2008 Fiscal Year Annual Research Report
脂質二分子膜による光エネルギー変換機能の高効率化に関する研究
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20550119
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 滋 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40192447)
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Keywords | 光エネルギー変換 / 脂質二分子膜 / 人工光合成 / 光誘起電子移動 / 励起エネルギー移動 / ピレン誘導体 |
Research Abstract |
平成20年度においては、光合成生物がもつ光捕集系のモデルとなるような光感応性両親媒性分子の設計と合成を行い、さらにDPPC、あるいはPOPCベシクルを反応場とする光誘起電子輸送反応系の反応効率を高めるために、効率を支配する様々な因子の最適化を行った。 光感応性両親媒性分子の設計と合成に関しては、ピリジニウム基を親水部とする新たな両親媒性ピレン誘導体を設計し、その合成に成功した。ベシクルにも良好に取り込まれ、吸収および蛍光スペクトルの詳細な検討により、溶液中ではピレン部位と親水部が接近した屈曲形のコンボメーションをもつのに対して、ベシクル中では直鎖構造をとっていることが判明した。 電子輸送反応効率を支配する因子の最適化については、まず、様々な誘導体の調製が可能であり、また電子輸送効率に対する置換基の効果を系統的に調べることができる点から1,6-ピレンジカルボン酸に注目し、種々の検討によりその収率のよい合成法を確立した。次いで、6位に種々の長鎖アルキル基をもつ1,6-ピレンジカルボン酸誘導体を合成し、光誘起電子輸送反応の増感剤としての有効性を評価した。その結果、従来の増感剤と比較して高い電子輸送速度が観測され、1,6-ピレンジカルボン酸誘導体は、期待どおり良好な増感剤となることが判明した。さらに、電子輸送効率の増感剤濃度依存性の詳細な検討から、DPPCベシクルに旨おいて、ピレンカルボン酸メチルを増感剤とする系に少量の1-ヒドロキシメチルピレンを添加すると電子輸送効率が著しく向上することを見出した。恐らく、吸収光量の大きいピレンカルボン酸メチルが光捕集系を構成し、吸収された光エネルギーが高い電子輸送効率をもつ1-ヒドロキシメチルピレンに移動し、それが増感翔となって電子輸送が進行したものと解釈される。この結果は、光合成生物がもつ光捕集系と反応中心との関連をモデル化したものと見なすことができ、極めて興味深い結果である。
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Research Products
(11 results)