2010 Fiscal Year Annual Research Report
希土類-遷移金属酸化物で見られる特異な誘電性に関する研究
Project/Area Number |
20550134
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
吉井 賢資 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (90354985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 直 岡山大学, 理学部, 教授 (00222894)
米田 安宏 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (30343924)
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Keywords | 遷移金属 / 誘電性 / 電荷秩序 / 電子移動 / 酸化物 |
Research Abstract |
鉄3d電子の秩序化で強誘電体となるRFe_2O_4(R=Y,Ho-Lu)の一つYFe_2O_4に対し、電子線回折実験を行った。この系は室温で強誘電体であるが、磁気転移温度近傍230-240Kに誘電性に異常が見られる。本実験から、この温度を境に鉄イオンの電荷秩序構造が変化することを報告した。この事実は、本系の強誘電性が通常見られるイオン変位でなく、鉄イオン電荷秩序に由来することを支持する。また、磁気転移温度を境に電荷秩序構造が変化することは、磁性と誘電性の相関を示唆する。低温での電荷秩序構造は単位格子の7倍を基本とする構造であり、室温近傍での3倍周期構造とは全く異なることも見出された。さらに、イットリウムイオンと、鉄イオンあるいは酸素イオンの相互作用の重要性も示唆する結果が得られており、RFe_2O_4の物性の複雑性と、更なる物性のバリエーションが存在する可能性を示した。 電子の空間秩序化に由来する誘電性は、ペロブスカイトマンガン酸化物R_<0.5>Sr_<0.5>MnO_3(R:希土類)においても報告した。この系では100K近傍で誘電率にピークが見られる。誘電率測定・磁化測定・磁気散乱測定・放射光吸収分光測定の結果を基に、この系の誘電性は通常見られるイオン変位でなく、マンガン3d電子の秩序化と移動が重要な役割を担うことを示した。類似の結果は、前年度までに同構造系R_<0.5>Ca_<0.5>MnO_3(R:希土類)やルテニウム酸化物でも報告しており、電荷の空間秩序化に拠る誘電性は広く存在することを示唆する。このような誘電性は低劣化素子の開発可能性が有ることから、今後引き続き調べてゆく予定である。
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