2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20550135
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山本 文子 The Institute of Physical and Chemical Research, 高木磁性研究室, 協力研究員 (50398898)
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Keywords | 金属酸化物 / パイロクロア型構造 / 高圧力合成 / 機能開拓 / 構造相転移 |
Research Abstract |
イオン結合が中心の複合金属酸化物において、共有結合性の強い特異な配位形式を有する水銀に着目し、水銀を含む新しい酸化物を見出すことで、金属絶縁体転移、超伝導性、誘電性などの実用可能な機能を開拓している。特に本課題では、Aサイトに水銀を、Bサイトに5価の遷移金属を配置したパイロクロア型酸化物A_2B_2O_7に焦点を絞った。高揮発性の水銀の組成を保持するため、超高圧法および石英封入法により合成を行っている。研究代表者らは、近年、約マイナス160℃で鋭い金属絶縁体転移を示す新規水銀パイロクロア型酸化物Hg_2Ru_2O_7を超高圧法により合成したので、本課題はこれを発展させ、特徴ある物性や機能を有する水銀含有パイロクロアを合成し、その組成と物性の関連を明らかすることを目的とした。本年度は、金属絶縁体転移が期待されるHg_2Ir_2O_7の新規物質の超高圧合成を試み、これに成功した。この物質はマイナス271℃まで金属的な伝導と常磁性的な性質を示した。物性、構造とも測定温度範囲で相転移は観察されなかった。Hg_2Ru_2O_7が金属絶縁体転移を示し、Hg_2Ir_2O_7が金属絶縁体転移を示さなかったのは第3遷移金属であるIrはより軌道の広がりが大きいためより金属性が強くなったためと推測される。同時に、新しいA_2Ir_2O_7(A=Tl,Ca,Cd)も合成し、構造、物性の比較、評価を行った。いずれも金属的な挙動を示したが、Tlは、磁化の温度依存性において、マイナス170℃付近に幅広なピークが見られた。これらの詳細は研究進行中である。引き続き、超伝導性が期待されるHg_2Re_2O_7や誘電性が期待されるHg_2V_2O_7等のパイロクロア型酸化物の合成を試みる計画である。
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