2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20550135
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山本 文子 独立行政法人理化学研究所, 無機電子複雑系研究チーム, 基幹研究所研究員 (50398898)
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Keywords | 金属酸化物 / パイロクロア型構造 / 高圧合成 / 機能開拓 / 構造相転移 / 金属絶縁体転移 / 超伝導 |
Research Abstract |
本研究では、共有結合性の強い特異な配位形式を有する水銀に着目し、水銀を含む新しい酸化物を見出すことで、金属絶縁体転移、超伝導性、誘電性などの実用可能な機能を開拓している。特に、Aサイトに水銀を、Bサイトに5価の遷移金属を配置したパイロクロア型酸化物A2B2O7を中心に研究を進めている。試料合成は高揮発性の水銀の組成を保持するため、超高圧法を用いる。研究代表者らは、H20年度には、金属的な伝導と常磁性的な性質を示す水銀パイロクロア型酸化物Hg21r2O7を、H21年度には、マイナス170℃で金属絶縁体転移を示し同時に磁化の抑制と構造相転移を伴うパイロクロア型酸化物T12Rh2O7を新規に合成した。本年度は、BサイトにReをもつHg2Re2O7の合成を試みた。Hgと同族のCdをAサイトに持つパイロクロア型酸化物Cd2Re2O7はマイナス272℃の超電導体であることから、この物質でもパイロクロア型酸化物Hg2Re2O7が安定化されれば、超電導体を得ることができると考え、4万気圧の超高圧下で合成を試みた。その結果、通常より低い約700℃での焼成で、Hg0.44ReO3の組成を持ち、六方晶タングステンブロンズ構造を持つ新規物質の合成に成功した。この化合物は、8.0K以下で電気抵抗ゼロと反磁性を示す超電導体であることが確認された。また、この物質に超高圧を印加した状態で電気抵抗を測定したところ、超伝導臨界温度は徐々に上昇し、4万気圧で最高11.1Kをし、さらに印加するとこの温度は低下した。これまで、この六方晶タングステンブロンズ構造では多くの物質において、特にBサイトがWのものを中心に、超伝導特性が報告されているが、今回の超伝導臨界温度は常圧においても高圧においても最高の値を記録した。この原因を明らかにし、さらなる物質設計に役立てるため、現在、結晶構造やその他の物性に関しても詳細な実験を進めている。
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