Research Abstract |
1, 含硫配位子としてD-ペニシラミネート(D-pen),L-システインエチルエステル(L-cysEt)、L-システインメチルエステル(L-cysMe)を用いた[Co(bidentate-N,S)_3^<0 or 3->の合成を行った。得られた単核錯体と硝酸銀を2:3で反応させることによって、Co:Ag=2:3の五核錯体[Ag_3{Co(D-pen)_3}_2]が形成された。CDスペクトルのピーク強度が単核錯体の2倍以上になっていることから,この多核化反応は,単核錯体のユニットを保持して進行し,△△またはΛΛの絶対配置をもつ五核錯体を形成しているとともに,ビシナル効果などが加わっていると考えられる。興味深いことに,L-cysEt錯体と,L-cysMe錯体とでは,生成物のCDスペクトルが対掌的になっており,絶対配置が異なっていると考えられた。今後,この特異的な不斉誘導反応について,詳細な検討を行っていく。 2, ピリミジンチオール誘導体配位子を用いて,銀,亜鉛,銀-亜鉛混合多核錯体を合成した。ピリミジン系有機配位子の置換基によって亜鉛-銀多核錯体の生成の可否が分かれ,ピリミジン環上に配位可能な置換基が存在する場合には,亜鉛錯体と銀イオンとの反応により,亜鉛-銀多核錯体が生成した。得られた錯体には,金属イオンや配位子の置換基の種類によって,蛍光発光が見られるものがあった。この種の化合物の合成例は少なく,蛍光発光性の報告も知られていないことから,新規材料としての利用が期待される。特に,4,6-ジメチル-2-ピリミジンチオラト銀錯体では,CH_3OH,C_2H_5OHなどに懸濁させることにより,強い蛍光性を有する化合物が得られ,蛍光極大波長や励起極大波長が大きく変化した。これは,錯体と溶媒分子との分子間相互作用に由来するものと考えられ,今後の分子設計のための有用な情報が得られた。
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