Research Abstract |
1,[Co(bidentate-N,S)_3Co(D-pen-N,O,S or dien-N,N,N)]^<2-or 0>錯体(bidentate-N,S=L-cys,D-pen)を合成した。立体選択性について,[Co(L-cys-N,S)_3]^<3->錯体や種々のコバルト(III)錯体の酸化還元能に注目して検討を行った。用いたコバルト(III)錯体の酸化還元電位が-0.4V(vs.Ag/Ag^+)付近の場合に,生成する二核錯体の立体選択性が大きく変化することがわかった。-0.4V(vs.Ag/Ag^+)より正側に酸化還元電位を有する[CoCl_2(en)_2]^+や[Co(NO_2)_2(NH_3)_4]^+では,絶対配置が保持されたのに対して,より負の電位を有する[Co(NO_2)_2(en)_2]^+や[Co(CO_3)(NH_3)_4]^+を用いると,絶対配置が反転したΛ体が優位に生成した。このような立体選択性に関する検討はなく,立体制御と機能の観点から非常に意義深いと考えられる。 2,2-メルカプトプロピオン酸を用いて,銀架橋錯体の合成を行ったところ,これまでのCo:Ag=2:1,1:1錯体に加えて,1:2錯体が生成した。NMRスペクトル及びX線結晶構造解析の結果から,一連の反応にはカルボキシル基と銀イオンとの相互作用が重要に寄与していることが明らかになった。これに対して,ピリミジンチオール誘導体を用いたコバルト-銀混合多核錯体では,芳香族チオラト配位子上の硫黄原子とピリミジンN原子を通して架橋を形成している全く異なった構造の四核錯体([{AgCo(dapymt)(en)_2}_2]^<6+>)が生成した。この錯体では,水溶液中におけるAg-S,Ag-N結合の開裂を示唆するデータが得られ,2-メルカプトプロピオン酸で安定な三核錯体が形成されたことと大きく異なっており,抗菌機能性への寄与に期待が持たれた。
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