2009 Fiscal Year Annual Research Report
新しい生体機能発見のための量子力学計算によるタンパク質の電子構造の決定
Project/Area Number |
20550146
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
PICHIERRI Fabio Tohoku University, 大学院・理学研究科, 准教授 (40374920)
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Keywords | 計算化学 / タンパク質 |
Research Abstract |
線形スケーリング半経験的量子力学計算により、カリウムチャンネルタンパク質KcsAの電子構造を計算した。このタンパク質は、カリウムイオンが細胞膜を行き来するのに重要なタンパク質で、8796原子を含んだテトラマーの構造をとっている。各モノマーは、短いヘリックス、中くらいの長さのヘリックス、長いヘリックスの3つのα-ヘリックスから成っている。403デバイという大きい双極子モーメントが存在することが、量子力学計算により示された。双極子モーメントの大きい値は、電荷をもった多数のアミノ酸残基に起因するものであり、特に、細胞膜の下の長いヘリックスに位置しているプラスの電荷をもったアルギニン残基によるものである。双極子モーメントベクトルは、4回回転軸に沿って配向し、細胞膜平均平面に垂直に配向している。双極子ベクトルのポジティブ部分は細胞の内部の方向を向いており、このことは細胞膜の外部を向いて強く分極していることを示している。この結果は、細胞膜を行き来するイオン輸送の生物物理に重要で、おそらくKイオンの動きはKcsAチャンネルの大きい双極子によって影響を受けていることを示唆している。 また、コラーゲンタンパク質の2つのチェーンを結ぶ硫黄原子と窒素原子の間のスルフィルイミン結合N-Sの性質も調べた。この結合は、最近アメリカの研究グループによって見つけられたもので、彼らはこれを2重結合と言っているが、私たちの量子力学計算によれば、一重結合であるという結果が出ている。分子における原子の量子理論を用いてスルフィルイミン結合の電子構造を解析し、スルフィルイミン結合が窒素原子に寄与している供与一重結合であることが明らかになった。スルフィルイミン結合のキャラクタリゼーションは、コラーゲンタンパク質のさらなる量子力学研究に重要である。
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Research Products
(3 results)