2010 Fiscal Year Annual Research Report
新しい生体機能発見のための量子力学計算によるタンパク質の電子構造の決定
Project/Area Number |
20550146
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
PICHIERRI Fabio 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (40374920)
|
Keywords | 計算化学 / タンパク質 / 量子力学 / 電子構造 |
Research Abstract |
小タンパク質Charybdotoxinについて、電子構造とKcsaカリウムチャンネルとの相互作用を調べるために、量子力学計算を行った。pH7.5におけるこのタンパク質の双極子モーメントは116Dであり、Charybdotoxinは大きい双極子モーメントにより.静電相互作用を通してカリウムチャンネルと相互作用を持つことができる。小タンパク質の双極子モーメントは、272Dという大きい双極子を持つイオンチャンネルの出入り口の上に正しく配向するのに、重要であること、Kcsa : Charybdotoxin錯体の形成は、イオンチャンネルを通したK+イオンの通過を妨げていることがわかった。この結果は、毒性ペプチドとイオンチャンネルの間の相互作用のメカニズムを理解するのに重要な結果であり、このことは、イオンチャンネルの活性を調整できる新しい薬の開発にも重要となる。 また、光合成から化学エネルギーを生成する能力のある紅色細菌LH2の電子構造を量子力学計算を用いることにより調べた。LH2錯体は、18のαヘリックスでできており、太陽エネルギーから化学エネルギーにするのに使われる細菌クロロフィルを27個含んでいる。LH2は、紅色細菌の膜表面の中にあるのが見つけられているが、ペプチド18個の双極子が806Dに対応するのに対して、1つのαヘリックスペプチドの双極子モーメントは、150Dである。この巨大双極子は、膜表面に垂直な向きを持ち、細胞の内側に向いたベクトルを持っている。この結果は、LH2による太陽エネルギーから化学エネルギーへの変換は非対称な静電環境をたいへん必要とすることを初めて示した。また、この結果は、合成光化学デバイスに基づいた新エネルギー源の発展に重要となるものである。
|
Research Products
(4 results)