Research Abstract |
オンチップ電気泳動システムを用いることによって,混合物を出発材料とするDNA増幅反応の生成物中から目的鎖長DNAを分取できること,また,1ウェルあたりの体積が19マイクロリットルの透明プラスチック製マイクロチャンバー内において遺伝情報に沿ったかたちでDNAからの遺伝情報発現が可能であることを示した.そこで,これら要素技術を統合して行うシステム化研究の一例として,DNAの増幅反応を一種の論理判断機構とみなし,プライマーの添加を化学的な入力信号とする,新しい型の分子論理演算システム開発を試みた.このシステムにおいては,2種類のプライマーが化学的な入力信号,目的配列をもつ増幅DNAが出力信号に対応する.増幅機構をイメージングするために,増幅されたDNAに蛍光蛋白質遺伝子と,転写および翻訳に必要な各種制御配列をあわせてコードさせた.この設計においては,通常の増幅反応がAND型の論理判断機構として作動する.そして,DNA鋳型の配列を種々考案することによって,AND,NOT,OR,AND-NOT型の論理演算が実行可能であることを示すことができた.さらに,演算型の多様化をめざし,万能論理演算ゲートであるNAND型論理ゲートの構築を進めた.NANDゲートが対応する入力信号が異なる2種類のNOTゲートの組み合わせで構成できることに注目し,2種類のNOTゲートをコードするDNA配列を設計した.これらDNAがDNA増幅反応によって正しく増幅されることを実験的に示し,両者を組み合わせてNAND型の演算可能性を示すことができた.以上のことから,オンチップ技術を軸とする分子操作術と,DNA配列設計の組み合わせによって,論理演算機構をとして作動する分子システムを構築することができた.
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