2010 Fiscal Year Annual Research Report
放射光真空紫外円二色性による生体分子の高次元構造解析
Project/Area Number |
20550153
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大前 英司 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教 (30284152)
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Keywords | 放射光 / 真空紫外円二色性 / タンパク質 / 二次構造解析 / ニューラルネットワーク法 / 糖類 |
Research Abstract |
放射光真空紫外円二色性(VUVCD)分散計を用い、以下の4点について研究した。 [1]アミノ酸・ヒドロキシ酸のVUVCDスペクトルの実験的・理論的研究:乳酸とアラニンのVUVCDスペクトルを時間依存密度汎関数法により計算し、水中での実測スペクトルと比較した。それぞれ9個と4個の水和水を考慮することにより実測スペクトルを再現することができ、アミノ酸とヒドロキシ酸のVUVCDスペクトルに及ぼす側鎖の影響は、水和ネットワークの違いで説明できることが分かった。(論文印刷中)。 [2]糖類のVUVCDスペクトルの実験的・理論的研究:メチルグルコースのVUVCDスペクトルを時間依存密度汎関数法により計算し、水中の実測スペクトルと比較して、C1位のα,βアノマー配位、CH_2OH基の回転異性(GG,TG,GT)、水和の影響などを明らかにした(論文作成中)。 [3]生体膜上でのアミロイド形成機構の解析:amyloid βペプチド(1-40残基)のVUVCDスペクトルを種々の濃度比のガングリオシドミセルGM1存在下で測定した結果、ミセル上でのペプチド濃度が高いほど分子間相互作用(α→β構造転移)を促進することが分かった。NMRの結果と比較し、C末端側の疎水性2残基が、α→転移に関わっていることが示唆された(論文印刷中)。 [4]蛋白質のVUVCDスペクトルに及ぼすexciton couplingの影響:ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の種々のTrp変異体についてVUVCDスペクトルを測定し、野生型と比較した。Trp残基のexciton couplingの影響は真空紫外領域にまで及んでおり、VUVCDによる蛋白質の二次構造解析において無視できないことが分かった(論文作成中)。 これらの結果は、VUVCD分光法が生体分子の高次元構造解析に有効であることを示している。
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