Research Abstract |
1.目的と計画 ポリマー半導体薄膜は,通常,溶液塗布法により形成され,溶媒は塗布すべきポリマーを溶解させるためだけに使用される.しかし,本研究課題では,ポリマー・溶媒分子間の電子的(電荷移動的)相互作用に着目する.すなわち,溶媒を塗布後の乾燥過程で除去可能なドーパントと捉えることの有用性について,その実験的検証を本研究の目的としている.平成20年度は,ポリマーにレジオレギュラー・ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(以下,P3HT)を用い,また,強い電子受容性溶媒を用い,塗布形成される薄膜のエレクトロニクス特性への影響を調べることを目的とした.なお,P3HTは電子ドナー性を有するため,電子受容性溶媒を検討した.当初,使用を計画していたトリフルオロメチルベンゼン類(以下,TFMB)には,P3HTが溶解性を示さなかったため,クロロホルムを溶媒とし,TFMBなどを添加することで,クリードーピングの効果を検討した. 2.結果 TFMBを添加し調製したP3HTのクロロホルム溶液から作製した薄膜を用いて,薄膜トランジスタを作製した結果,TFMBの添加により移動度が向上することが分かった.用いるクロロホルム100に対し,0, 1, 2とTFMBの添加量を増加させるとともに,移動度が,6.2×10^<-3>, 1.1×10^<-2>, 1.6×10^<-2>cm^2/Vsと向上した.調製した薄膜のX線回折と紫外可視吸収スペクトルから,TFMBの添加によってP3HT薄膜の分子パッキングが改善していることが示唆された.X線光電子分光法を用いた含有元素の分析からはフッ素の存在を示唆する結果は得られず,クリーンドーピングによる性能向上を達成することができた.
|