Research Abstract |
【目的と計画】ポリマー半導体薄膜は,通常,溶液塗布法により形成され,溶媒は塗布すべきポリマーを溶解させるためだけに使用される。しかし,本研究課題では,ポリマー・溶媒分子間の相互作用に着目し,溶媒を塗布後の乾燥過程で除去可能なドーパントと捉えることの有用性について,その実験的検証を本研究の目的としている。平成21年度は,レジオレギュラー・ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(以下,P3HT)トランジスタにおいて,電子受容性を有する揮発性添加剤としてトリフルオロメチルベンゼン(TFMB)を添加した際に見られた特性向上について,そのメカニズム解明を行う。すなわち,1)TFMB添加量依存性の詳細調査,2)溶媒依存性の検討,を行う。 【結果】P3HTクロロホルム溶液へのTFMB添加によって,作製したポリマートランジスタの移動度が向上することを改めて確認した。すなわち,クロロホルム100に対し,TFMBを2添加したとき最大の移動度0.026±0.003cm^2/Vsが得られ,未添加の時の3.2倍であった。一方,添加量を100:10とすると,移動度は低下し,最適添加量が存在した。 TMFBはP3HTの貧溶媒であるため,用いる溶媒をよりP3HTの溶解度の高いものとすることでTFMBの添加可能量を増加させ,より大きな特性向上をねらった。1割ほど溶解性の高い4塩化炭素を用いると,TFMB添加量100:10の時,最大移動度0.040±0.009cm^2/Vsが得られ,未添加の時の6倍以上となった。 以上,揮発性のTFMB添加によって,P3HTトランジスタの大幅な特性向上が達成された。非極性溶媒である4塩化炭素で大きな特性向上が得られることは,特性向上のメカニズムを調べる上で重要な知見である。
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