2010 Fiscal Year Annual Research Report
液晶エラストマーの形状記憶に対する架橋トポロジー効果
Project/Area Number |
20550167
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
平岡 一幸 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50267530)
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Keywords | 液晶 / 高分子液晶 / 液晶エラストマー / 主鎖型高分子液晶 / 架橋剤 / 光学活性分子 / 人工筋肉 / 高分子構造・物性 |
Research Abstract |
平成22年度の主な研究実績は以下の4項目である。 (1)主鎖型スメクチック液晶エラストマーの配向制御とUV架橋:主鎖型液晶高分子S-BB-4^*(2Me)/6をいくつかの液晶温度領域においてUV架橋しポリマーネットワークを得た。SmC^*相で架橋した試料は螺旋構造を持ち、SmC^*-SmA相転移において螺旋の解けに伴う巨視的振れ変形が観測された。SmA相で架橋した試料は、室温でもメソゲンの傾きは認められずSmA相のみを発現し、SmA-Iso転移で層法線方向に伸縮した。Iso相で架橋した試料ではスメクチック相は出現せず、異方的変形は観測されなかった。 (2)ヘリカルメカノクリニック効果:SmC^*相を有する主鎖型液晶高分子S-BB-4^*(2Me)/6をSmA相(210℃程度)で熱架橋し主鎖型液晶エラストマーを合成した。一軸延伸下の架橋で得られた試料は、室温でもメソゲンの傾きは認められずSmA相のみを発現した。原料ポリマーのSmC^*相における螺旋掌性と同じ方向の右捩れ変形を加えながら架橋した試料は、室温でメソゲンが層法線から16°傾いたSmC^*構造となった。しかし、左捩れ変形を加えた試料は数度程度以下の傾きであった。この結果は、メソゲンの傾きと捩れ変形との掌性カップリングを示している。 (3)SmA^*液晶エラストマーの電傾効果と電界誘起変形:ポリシロキサン主鎖にメソゲン側鎖としてコレステリック誘導体を導入したSmA^*液晶エラストマーを合成した。SmC^*相は現れずSmA^*相のみが発現した、SmA^*相において電傾効果(光軸変化)と巨視的な正方形状から単斜形状への変形が観測された。層が1次元結晶であることを反映し、光軸の傾きに伴う層伸縮と層法線方向の試料伸縮は同程度であった。一方、層内分子の液体的秩序に起因する分子再配列のため、フィルム変形の傾きは光軸の傾きの1/50程度しか反映しなかった。 (4)側鎖型SmC^*液晶エラストマーにおけるソフト弾性:応力印加履歴の異なる2種類の均一配向SmC^*エラストマー(「SmA-SmC^*相転移時にせん断応力印加架橋を行った均一配向SmC^*エラストマー」と「SmC^*相における層方向の延伸による均一配向SmC^*エラストマー」)を合成し、両者の昇降温における変形挙動と分子再配列を検討した。両者とも液晶相から等方相にかけての昇降温で2軸性の形状記憶機能を有していた。せん断変形試料はモノドメイン試料であるため、SmA相からSmC^*相転移にかけて、正方形状から単斜形状へとメソゲンの傾きと同程度の傾きで可逆的に変形した。一方、延伸試料は同相転移において層の傾きが確認されたが形状はほとんど変化しなかった。これは、延伸試料がポリドメイン試料であり、各ドメインの回転が独立におこるため、巨視的な形状変化を伴わなかったものと考えられる。
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