Research Abstract |
ゾルゲル法では,溶液を塗布して乾燥,焼成するだけで,数十~数百ナノメーターの厚さのセラミックスコーティングができる。しかし焼成が必要であるため,プラスチックのような耐熱性の低い材料へのコーティングはできない。そこで当該研究では,既に結晶化したセラミックスナノ結晶が分散した水溶液を調製し,その水溶液を塗布,乾燥するだけで緻密なセラミックス薄膜をコーティングすることを考えた。昨年度の研究において,粒径約5nmのアナターゼ型酸化チタンナノ結晶が分散した透明水溶液の合成に成功した。当該年度は,その酸化チタンナノ結晶のコロイド水溶液を用いて,酸化チタンコーティングを行った。ナノ結晶は水への分散性が高いため,塗布しただけでは当然,水で流れ落ちてしまうが,ナノ結晶を分散するために添加している有機物のひとつが分解する温度で熱処理することで,比較的緻密性の高い酸化チタンコーティングができた。その有機物として,低温で分解可能なものを用いることにより,耐熱性が低い材料をコーティングすることが可能であると示唆された。また,酸化チタンの応用としては,光触媒などの表面反応を利用したものが多くあるため,表面積の大きい薄膜を作製することが有用である。酸化チタンナノ結晶のコロイド水溶液に界面活性剤を添加して,組織化した界面活性剤に由来する細孔をもつ薄膜をゾルゲル法で作製することを試みた。一般的に,界面活性剤の燃焼温度より,酸化チタンの結晶化温度が高いため,その結晶化に伴い細孔がつぶれてしまうが,すでに結晶化したナノ結晶を使うことにより,そのような問題が解決できると考えた。結果として,界面活性剤とナノ結晶凝集体の分相に由来する多孔構造をもった薄膜や,規則配列はしていないものの,約十ナノメーターの細孔をもったものなど,様々な微構造をもった酸化チタン多孔質薄膜が作製できた。
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