Research Abstract |
本研究の目的は,水熱条件下で起こる構造遺伝的固相脱水反応を新しい合成ツールとして利用するため,そのような反応を実現する因子やその反応で起こる構造組換えの方向(構造組換えがどの構造に向かって起こるのか)を決めるパラメータについて明らかにすることである.そのため,申請者が最近新たに見出した,水熱条件下で起こる構造遺伝的固相反応「CoMoO_4.3/4H_2Oが453K, ca.10気圧の水熱条件下で高圧相hp-CoMoO_4(従来法による生成では,873K,50000気圧の過酷な条件が必要)へ変化する脱水反応」と関連する種々のモリブデン酸塩の水化物の水熱条件下での構造変化について調べる必要がある.本計画の研究対象となるこれらの水化物のいくつかについては,結晶構造が未知であり,また,合成方法が確立されていないものもある.本年度の研究では,それらの結晶構造の決定と合成法の確立を行った. まず,組成の解釈に混乱があり,単一相としての合成法の確立がなされていない,NiMoO_4nH_2Oについて検討を行い,単一相として合成する方法を確立するとともに,その結晶構造の決定に成功し,その水化物がCoMoO_4.3/4H_2Oと同一構造型をとることを明らかにした.また,その研究の過程で,新たな水化物であるNiMo_4O_132H_2OやCoMo_4O_132H_2Oを見出し,それらの合成方法を確立するとともに,それらの結晶構造を決定することに成功した。そして,それらが層間架橋された興味深い酸化物骨格を持つことも明らかにした.(これらの結果は学会発表と論文により報告し,公開された)これら以外の水化物についても順次合成方法を詰め,研究実施計画に必要な種類と量の水化物の合成は,ほぼ出来上がりつつある.また,合成された水化物を用いて,水熱条件下で起こる構造組み換え反応について調べる研究も順次進行しつつある.
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