2009 Fiscal Year Annual Research Report
水熱条件下で起こる「構造遺伝的固相脱水反応」の研究
Project/Area Number |
20550176
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
枝 和男 Kobe University, 理学研究科, 助教 (00193996)
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Keywords | 水熱合成 / 固相反応 / 構造遺伝 / ソフトケミストリー |
Research Abstract |
本研究の目的は,水熱条件下で起こる構造遺伝的固相脱水反応を新しい合成ツールとして利用するため,そのような反応を実現する因子やその反応で起こる構造組換えの方向(構造組換えがどの構造に向かって起こるのか)を決めるパラメータについて明らかにすることである.そのため,申請者が最近新たに見出した,水熱条件下で起こる構造遺伝的固相反応「CoMoO_4・3/4H_2Oが453K,ca.10気圧の水熱条件下で高圧相hp-CoMoO_4(従来法による生成では,873K,50000気圧の過酷な条件が必要)へ変化する脱水反応」と関連する種々のモリブデン酸塩水化物の水熱条件下での構造変化について調べている. 本年度の研究では,昨年度新たに合成法の確立や結晶構造の決定を行った水化物を含め,純粋に合成された種々の水化物に水,水+エタノール(1:1),エタノールの3種類の溶媒中で水熱処理を施し,組成,結晶構造,粒子形状の変化などについて調べた.その結果,脱水を伴った上述した構造の転換には溶媒としての水の存在が不可欠であり,CoMoO_4・3/4H_2Oと少し異なる構造を持つMnMoO_4・1H_2Oでも水熱条件下での高圧相hp-MMoO_4への転換が起こることがわかった.しかし,CoMoO_4・3/4H_2Oと同一構造型をとるNiMoO_4・3/4H_2Oではその構造転換は認められず,CoMoO_4・3/4H_2Oでも結晶性の高い試料の場合には構造転換が起こらないことがわかった.結晶性の異なるCoMoO_4・3/4H_2Oの水熱条件下での構造転換を詳細に調べた結果,構造転換には溶液に溶け出した成分と水化物との固相反応が必要であることがわかった.これらの結果は学会発表で報告し,公開するとともに,論文により公開するため,"Synthesis, crystal structure, and structural conversion of Ni molybdate hydrate NiMoO_4・nH_2O,"K.Eda et al.としてJournal of Solid State Chemistryへ投稿中である.
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Research Products
(1 results)