2010 Fiscal Year Annual Research Report
ロタキサン型機械結合架橋点を導入したポリウレタンエラストマーの開発
Project/Area Number |
20550191
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
村上 裕人 長崎大学, 大学院・生産科学研究科, 准教授 (30274624)
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Keywords | ロタキサン / ポリウレタン / ネットワークポリマー |
Research Abstract |
本研究では、ポリロタキサンの環状分子にポリウレタンのプレポリマーを直接結合させた新規ポリロタキサン架橋ポリウレタンの合成・分子設計を行い、ロタキサン構造の特徴がポリウレタンの物性にどのような影響を与えるかを調べる。 ポリロタキサン架橋のポリウレタン(PRX-PU)を合成した。比較として、1,4-Butanediol (BD)及びシクロデキストリンCD(Me-CD)でつなげたポリウレタン(BD-PUとCD-PU)も合成した。 ATR-FT-IRスペクトル測定では、水素結合したC=0伸縮振動とフリーのC=0伸縮振動が観測された。CDの立体障害によりBD-PUに比べPRX-PU、CD-PUのC=0伸縮の水素結合形成の割合が減少した。DSC測定の結果、BD-PUでは明確なガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、融点(Tm)が観測されたが、CD-PUとPRX-PUでは急冷しなければこれらの温度のピークが明確に見られなかった。PRX-PUとCD-PUのソフトセグメントはBD-PUのソフトセグメントより結晶化しやすい構造となっていることが示唆された。 動的粘弾性測定を行い、BD-PU、CD-PU、PRX-PUのE'(貯蔵弾性率)、E"(損失弾性率)、tanδ(損失正接)における挙動を比較した。BD-PU、PRX-PU、CD-PUのtanδには、α緩和に帰属できるピークがそれぞれ-56.8℃、-63.7℃、-63.6℃に観測された。このピークの温度はDSC測定でのソフトセグメントのTgとほぼ一致した。E'では、PRX-PUにおいて-20℃付近に再結晶化のピークが見られた。また、PRX-PUのE'のゴム状平坦領域はBD-PUとCD-PUのそれと比べ、高温領域まで維持していた。これは、ポリロタキサンの剛直なカラム構造がフィラーのような役割を果たすことで、PRX-PUの強度が高くなったからであると考えた。このことは、Table1の引張試験におけるPRX-PUのヤング率がBD-PUより高いことからも言える。また、PRX-PUとCD-PUのヤング率はBD-PUのそれより大きな値であった。これは、マルチ共有結合架橋とソフトセグメントの結晶化起因している。PRX-PUの応力-歪み曲線には2段階の伸びが観測された。BD-PUやCD-PUには観測されていないことから、この挙動はPRX-PUのロタキサン架橋部の環状分子の並進運動の効果であると観察した。
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