2009 Fiscal Year Annual Research Report
生分解性高分子のメソ構造形成における弱い分子間水素結合の役割
Project/Area Number |
20550197
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 春実 Kwansei Gakuin University, 理工学研究科, 専門技術員 (10288558)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 園 (財)高輝度光科学研究センター, 副主幹研究員 (40304745)
|
Keywords | 生体高分子 / メソ構造 / 水素結合 / 結晶構造 / 高分子構造・物性 |
Research Abstract |
本研究では放射光を利用した時間分解小角/広角X線散乱(SAXS/WAXD)同時測定、赤外分光法、実験室レベルでのX線回折測定、DSC、偏光顕微鏡観察等を駆使して、ポリエステル系生分解性ポリマーの結晶構造中に存在するC-H…O=C水素結合の役割を明らかにすることを目的としている。 これまでの我々の研究で、生分解性ポリマーであるポリヒドロキシブタン酸(PHB)の結晶構造中にはこの弱いC-H…O=C水素結合が存在することが分かっている。そこで、本研究課題では、水素結合部位である側鎖の長さを変えることでC-H…O=C水素結合の強さを変化させ、また共重合体の組成を変えることで全体の水素結合の数をコントロールし、メソ構造形成過程および結晶構造の安定化とC-H…O=C水素結合との関係を明らかにすることを目指している。 赤外分光法、X線回折、小角X線散乱測定の結果を総合的に検討し、水素結合間の距離、部位、あるいはラメラ厚に依存した水素結合数の違いによるそれらの熱挙動の違いや、メソ構造形成過程の違いについて詳細に調べた。その結果、側鎖がメチル基のPHBに比べてエチル基を有するポリヒドロキシバリレート(PHV)では水素結合の部位が異なり、側鎖のメチル基ではなく主鎖あるいは側鎖のメチレン基と水素結合を形成していることが分かった。しかしながら、PHVの結晶もPHBと同程度のラメラ厚を有し、温度の上昇に伴い、融点付近までその結晶構造を保つことが示された。さらに炭素数が増えた、側鎖にプロピル基を有する場合には、もはや結晶構造を形成することは難しくなる。また、メチル基とプロピル基をランダムに有する場合は、プロピル基がごく少量加わっただけでラメラ厚は激減するものの、C-H…O=C水素結合によって薄いラメラ厚でも結晶構造を保つことができることが示された。また、PHBとPHVでの結果から、分子鎖の折りたたみ方向とC-H…O=C水素結合は一致していることが示された。
|
Research Products
(18 results)