2008 Fiscal Year Annual Research Report
海洋生物からのバイオナノファイバーの製造および透明な高機能性ナノ複合材料の創製
Project/Area Number |
20559003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Special Purposes
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
伊福 伸介 Tottori University, 工学研究科, 講師 (70402980)
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Keywords | ナノファイバー / キチン / キトサン / バイオマス / カニ、エビ |
Research Abstract |
申請者らは平成20年度の科学研究費補助金の助成を受け、世界に先駆けて、カニやエビの殻に含まれるキチン質のナノファイバーを簡便かつ大量に抽出することに成功した。 エビやカニの殻は極めて細く均質なキチンナノファイバーと、その隙間を満たすマトリクス成分(タンパク質と炭酸カルシウム)で構成されている。そこで、まずはエビ殻を原料として用い、水酸化ナトリウムおよび塩酸で処理することによって、上記のマトリクス成分を取り除いた後、精製したキチンをグラインダーで解繊したところ、幅10-20nmの極めて細く、均質なナノファイバーを得ることに成功した。また、酢酸を添加することによって、解繊効率が一層向上することを見出し、構造のより複雑なカニ殻からも均質なナノファイバーを単離することに成功した。本方法はカニやエビが外皮に蓄えているナノファイバーをありのままの形状で抽出することができる画期的な方法であり、従来の方法と比較して、化学的変性を受けておらず、繊維の細さ、均質性、アスペクト比、簡便性、製造コスト等の面で優れている。キチンは生体適合性や生分解性を有し、止血、創傷治癒、抗炎症作用、掻痒抑制など多彩な機能を備えていることが知られている。また、キチンナノファイバーは伸びきり鎖結晶で構成されているため、優れた物性を備えている。よって、機能と物性を兼ね備えたキチンナノファイバーは、医療や複合材料分野を中心とした幅広い利用が期待される。ナノファイバーの製造方法は従来の工業的なキチン精製方法に則っており、実用化に向けて低コストで大量生産が可能であり、この微細な繊維の利用開発はこれまで大量に廃棄されて来た、カニやエビの殻の有効利用に繋がる。本成果は既に、特許出願によって知的財産権を確保しており、学術論文や国際学会において発表をしている。日本は世界一のカニ、エビの消費大国であり、今後、日本がリーダーシップを取ってキチンナノファイバー研究分野を牽引していくと期待している。
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Remarks |
基盤C
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Research Products
(8 results)