Research Abstract |
ゾルーゲル法は,液体原料の基板への塗布と乾燥を繰り返して膜厚を制御し,その後酸化雰囲気中で試料を焼成して結晶を合成する。これまで我々が用いてきたスピンコート法は,多層膜を積層する場合には,人手に頼る部分が多く,スピードと精度に問題が残っていた。ZnO積層構造の作製および水素添加を円滑に実施するためには,プロセスの高速化が重要となる。平成20年度は,装置の自動化を考慮して,購入したディップコート装置および電動制御ステージをベースにして,新しいディップコート法によるゾル・ゲル合成装置を作製し,基本的な薄膜合成条件のチェックを行った。 平行して,ZnO中への水素添加を,熱拡散を用いて試みた。ゾル・ゲル法で作製したZnO薄膜を,水素ガス中において,100℃から450℃で熱処理することにより,試料の電気抵抗が2桁ほど低下することが明らかとなった。伝導度の処理温度および処理時間依存性より,水素は,表面からZnO中へ拡散して,ドナーとして働いている可能性が高いと考えている。さらに,600℃程度の再熱処理により,再び抵抗が高くなる現象も観測されており,水素を出し入れすることにより,伝導度すなわちフェルミ準位が制御できることを示唆している。今後,アクセプターを共添加することにより,新しいドーピング技術が確立されることを期待している。勿論,水素の欠陥生成との関わりなど,解明が待たれる問題も山積しているが,新装置の完成をばねにして,研究の進展を計りたい。
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