2010 Fiscal Year Annual Research Report
相転移酸化物結晶成長と電界誘起スイッチングに関する研究
Project/Area Number |
20560016
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
沖村 邦雄 東海大学, 工学部, 教授 (00194473)
|
Keywords | 機能性酸化物 / バナジウム酸化膜 / スパッタ成膜法 / 相共存 / スイッチングデバイス / 相転移 / 酸化状態制御 / エピタキシャル成長 |
Research Abstract |
二酸化バナジウム(VO_2)薄膜における相転移特性に対してVO_2相とは異なる結晶相の共存が大きな影響を与えることが注目されており,研究計画の最終年度となる今年度は酸素流量を抑えることで低い酸化度の結晶薄膜を作製し,異相共存がVO_2薄膜の相転移に与える影響について検討した. 微小流量の酸素流量コントローラを利用して成膜を行なった結果,c面サファイア基板上にV_2O_3結晶薄膜がエピタキシャル成長した.この薄膜は室温において金属的伝導を示し,80Kの低温において3桁程度の抵抗増加,即ち相転移を示した.V_2O_3結晶はコランダム構造でありサファイア基板と同一の構造であり,両者のミスフィットも小さいために低い酸素流量下においてV_2O_3がVO_2よりも優先的に成長することが判明した.そのため15nmという非常に薄い膜厚において良好なV_2O_3の結晶成長を実現できたが,このような非常に薄い膜では基板との間に生じた圧縮性ストレスの影響によって低温での抵抗変化は抑制されることがわかった.一方,膜厚を200nm程度と厚くした場合に3桁以上の抵抗変化を伴う相転移が発現したが,酸素流量の微妙な変化によってVO_x(1.5<x<2)組成となることが判明した.具体的にはV_4O_7やV_5O_9といったいわゆるマグネリ相組成の酸化状態を取る.以上の結果は,VO_2結晶薄膜作成において酸素流量の僅かな変化が異相共存下にあるバナジウム酸化膜をもらたすことを示している. 今年度の成果は,2008年度及び2009年度に得られたプレーナ型スイッチングデバイスにおけるスイッチング特性に対して膜中の相共存の影響が重要であることを示したものである.
|
Research Products
(4 results)