Research Abstract |
SiCはSiにくらべ絶縁破壊電圧が10倍,熱伝導率が3倍大きく,バンドギャップエネルギーも3.2eVと大きいことから,可視光発生用高出力波長変換材料の決定版になる可能性がある.しかしながら,波長変換の効率を決定づける2次非線形光学定数については,過去の報告の間でばらつきがきわめて大きく,値が確定していなかった.この原因は,測定に用いられた試料の品質と測定法との両方にあると考え,本研究は高純度高品質結晶と精密測定法を用い,SiCの2次非線形光学定数を正確に決定することを目的として行っている. 本年度は昨年度に引き続き,基本波光源に波長1.064μmのQスイッチNd : YAGレーザを用い,(11-20)面試料を用いて回転型Makerフリンジ法とウェッジ法の2種類の手法で測定を行った.回転型Makerフリンジ法では平行平板試料内でのビームの重なりのズレまで考慮した多重反射効果解析手法を確立し,従来の(0001)面試料では誤差が大きかったd_33も含め,6H-SiCの正確な値を求めることに成功した.また,ウェッジ法では,異なるメーカー製の2種類の6H-siCと,1種類の4H-SiCを用い,最も高品質な結晶が得られる(0001)基板から側面の(11-20)面を切り出すことによって試料を作製した.測定結果に対して多重反射効果を考慮した解析を行い,6H-SiCについてはメーカー,面方位,測定法によらず一致した値が得られた.また,d_33は6H-SiCの値12.5pm/Vに比べ4H-SiCの値11.7pm/Vが小さく,理想的な正四面体配位からのずれの度合いで説明されることがわかった.以上より,SiCを用いた波長変換デバイスの正確な設計および評価が可能となり,今回得られた成果の意義は大きいと考えられる.
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