2008 Fiscal Year Annual Research Report
電子散乱制御による量子カスケードレーザの高性能化と遠赤外・テラヘルツ化
Project/Area Number |
20560040
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
笠原 健一 Ritsumeikan University, 理工学部, 教授 (70367994)
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Keywords | 量子カスケードレーザ / テラヘルツ / 光デバイス / 環境 / 生命科学 |
Research Abstract |
本研究期間中にはQCLの室温連続動作が実現され、6.1μm室温DFB-QCLに対して線幅増大係数αの評価を行った。室温近傍でαがどのようになるかといったデータはこれまで殆どなかった。測定では〜-1.6という値が得られた。α値がゼロでない原因としては、DFB波長が利得ピークにあっていないことによるものと想像している。αはQCLの利得形状に関する情報を間接的に与えてくれる。QCLでは曲率の等しいサブバンド間遷移を利用していると扱われ、利得スペクトルはピーク波長に対して左右対称であるとされていた。しかし、ミニバンドを使わないQCLでのELは文献等を見ると長波長側にテールを引いた形状となっている。そこで、サブバンドの非放物線性を電子の有効質量の違いによって近似し、利得を計算した。計算ではさらに、フォノン散乱を伴った2次の電子遷移(いわゆるブロッホ利得)も考慮した。上下のサブバンドの有効質量が等しく、電子密度が等しい時(反転分布が形成される直前)には、通常の1次の遷移からは利得は生じない。しかし、2次の遷移からは遷移波長よりも長波長側で利得が、また短波長側では吸収が現れる。電子密度の比が大きくなると通常の1次の遷移の影響が強くなると、このような利得/吸収の非対称性は消失する。一方、非放物線性の影響を考慮すると、電子密度が等しい時には2次の遷移だけでなく1次の遷移からも分散的な波形が現れる。電子密度の差を大きくすると1次の遷移過程がやはりメインとなる。いずれにしても閾値以上の領域では利得の非対称性はサブバンドの非放物線性から現れているというのが計算結果である。利得が得られるとクラマース・クローニッヒ変換より屈折率が分かり、αの波長依存性が求められる。6.1μm室温DFB-QCLのα値は〜-1.6であったが、計算によれば利得が1/2になる位置ではこの程度の値になっておかしくない。
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