2010 Fiscal Year Annual Research Report
電子散乱制御による量子カスケードレーザの高性能化と遠赤外・テラヘルツ化
Project/Area Number |
20560040
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
笠原 健一 立命館大学, 理工学部, 教授 (70367994)
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Keywords | 量子カスケードレーザ / テラヘルツ / 光デバイス / 環境 / 生命科学 |
Research Abstract |
H22年度はQCLで指摘されている固有の雑音や戻り光雑音について調べた。QCLは環境・エネルギーに関するガスの検出などに利用される。このような分光学的応用上では低雑音な特性が重要となるが、QCLのRINの温度依存性を調べ、77Kと室温でのRINに大きな差は見られないことを初めて明らかにした。一方、QCLでは発光層がカスケード状につながっているので定電圧源の場合は特に電子相関が強くなってRINが増加する可能性がある。そこで定電圧源と定電流源との違いによるRINへの影響を調べたが、これについては測定器の限界で差は見られなかった。次にRINの戻り光による影響をDFB-LDと比較、測定した。レーザは一般的に戻り光による影響を受けやすく、出力に対する相対的な戻り光量が10^<-6>dB程度とごくわずかでもRINは増大する。QCLでは波長に合うアイソレータが無いため、戻り光耐性が重要となるが、測定の結果、QCLではDFB-LDに比べて戻り光の影響が小さいことを初めて見いだした。1.55μmDFB-LDで規格化電流が0.01~0.3程で測定したところRINは~25dB/Hz、増大したが、これはスペクトルのコヒーレント・コラプスが起こったためである。QCLでの戻り光雑音の測定にはSPC構造を持つペルチェ駆動6.1μm InGaAs/InAlAs DFB-QCLを用いた。測定系は1.55μmDFB-LDとほぼ同様のものを用いたが、QCLでは戻り光によるRINの上昇は見られなかった。その理由を分析した結果、QCLの低αが一因となって雑音が抑制されていることが分かった。QCLはスペクトル幅が狭く、コヒーレンシーが高いので戻り光耐性が低いと思われていたがそうではなく、これを見い出した意義は大きい。
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