2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ結晶ゲルマニウム薄膜を用いた熱光発電素子に関する研究
Project/Area Number |
20560047
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
磯村 雅夫 東海大学, 工学部, 教授 (70365998)
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Keywords | 熱光発電 / ナノ結晶 / ゲルマニウム / 反応性スパッター / 不活性ガス / 水素 / イオン衝撃 / 結晶性 |
Research Abstract |
本研究では熱源から放射される赤外光を電気エネルギーに変換する熱光発電(Thermophotovoltaic)に用いる光電変換素子の実現を目的に、ナノ結晶ゲルマニウム薄膜の研究開発を行っている。また、将来の実用化を踏まえ、低コスト且つ大面種化が可能な反応性RFスパッター法による作製を提案している,しかし、ナノ結晶ゲルマニウムでは粒界欠陥等により大きくp型化するという問題がある。そこで、本年度はn型の不純物として働く酸素に加え、膜中の応力変化によるp型欠陥低減を期待し炭素の微量添加を試みた。不純物添加は安価で比較的安全な酸素、メタン及び二酸化炭素によって行った。反応性スパッター用ガスである10ccmアルゴンと100ccm水素に対し、酸素を10^<-3>から10^<-2>ccm混入させることで、結晶性が低下することなく導電率の光感度が現れた。また、メタンでは混入量3.5×10^<-3>から2×10^<-2>ccmにおいて結晶性の低下なしに導電率の光感度が現れた。一方、酸素と炭素を両方を持つ二酸化炭素の混入でも、光感度が現れるが、5×10^<-3>ccmで結晶性が低下しその効果はなくなった。これらの実験結果は結晶性を損なわない程度に酸素または炭素を少量添加することでナノ結晶ゲルマニウムの特性改善に効果があることを示している。ホール効果の測定より、これら不純物ドープ試料は弱いn型であることが分かっており、ゲルマニウム特有のp型欠陥が抑制されたことを示唆している。これはドナー型不純物による補償効果または膜中応力変化による欠陥の電子状態変化により、ナノ結晶ゲルマニウム中の欠陥が不活性化したことで少数キャリアが長寿命化したと推察される。ナノ結晶ゲルマニウムにおいて、導電率の光感度を得たのは本実験が初めての事例であり、物性的に興味深い現象であると同時に、ナノ結晶ゲルマニウムの光電変換素子への応用を期待させるものである。
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