2010 Fiscal Year Annual Research Report
陽電子分光による金属材料工業製品の熱履歴分析法の研究
Project/Area Number |
20560050
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
黒木 健郎 科学警察研究所, 法科学第二部, 室長 (60392271)
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Keywords | 陽電子 / 消滅ガンマ線 / 金属材料 |
Research Abstract |
本研究は、各種金属工業材料の製造時における加工ひずみを陽電子消滅ガンマ線分光によって検出し、火災現場等に残された金属片の熱履歴や各種金属加工過程の痕跡検出することを目的とする研究である。本年度は母材金属上に形成された異種金属膜の生成過程による加工履歴検出の実験を試みた。母材金属に銅板を用い、母材表面に金の蒸着膜とメッキ膜を別々の試料として作成し、両者の違いを陽電子消滅ガンマ線分光によって測定した。また、金板(0.5mm厚)と金箔(2.5μm厚)との違いも測定した。 金箔の測定は、使用する陽電子源(Na-22)の陽電子が確実に停止吸収されるように8枚の金箔を重ねて20μm厚で行った。金板と金箔の消滅ガンマ線の運動量分布は明瞭に異なっており、金箔製造時における加工ひずみが検出できたと考えられる。銅板上の金の膜は無電解メッキと真空蒸着で形成し、膜厚は膜形成前後の銅板の重量変化から測定した。作成した試料の膜厚はメッキ(2.3と4.5μ鳳)、蒸着(2,6と5.2um)であった。銅板上に形成された金の膜において、消滅ガンマ線の運動量分布が銅板のものから金の膜の運動量分布に変化してゆき、変化量は金の膜厚にほぼ比例していた。また、蒸着によって形成された膜の運動量分布の変化量はメッキで形成された膜からのものに比較して大きくなっていた。これらの結果から、銅板上に形成された金膜に関して、膜の形成亥法とその厚さを陽電子消滅ガンマ線分光によって解析できると考えられる。
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