Research Abstract |
陽極酸化処理(AD)と塗装膜(P)を複合させたハイブリッド処理試験片を用いて3%食塩水中にて腐食疲労実験を行った.その結果,陽極酸化処理(AD膜)単独では腐食疲労寿命を改善できないが,AD膜とP膜(塗装処理)のハイブリッド処理によって,腐食疲労寿命を大幅に改善することができることがわかった.しかし,ハイブリッド処理材でも,陽極酸化(AD)膜を厚くするに従って,耐腐食疲労性能の改善効果が減少した.AD膜を30μmとしたハイブリッド処理材のAD_<30>P_<20>(AD膜30μm,塗装膜20μm)試験片では,裸材と同程度の腐食疲労強度まで低減することから,塗装処理(P膜)による改善効果は消失した.FEM解析ソフトを用いて,荷重を負荷した際に,AD膜厚さならびにその粗さに起因してP膜に発生する弾性ひずみを定量的に求めた.その結果,AD膜の厚みが増加するに従って,すなわちその粗さが大きくなるに伴い,塗装(P)膜のひずみ値が増加した. AD_0P_<20>,AD_<10>P_<20>,AD_<30>P_<20>の3種類の試験片を用いて,100MPaの曲げ応力を負荷した場合の電気化学分極曲線を測定した.無負荷の状態では,これらの試験片の分極挙動は観察されなかった.AD膜の薄い試験片AD_<10>P_<20>(AD膜10μm,塗装膜20μm),あるいはAD膜が存在しないAD_0P_<20>(AD膜0μm,塗装膜20μm)試験片では,応力を負荷しても,分極挙動は観察されなかった.無負荷では,分極しなかったAD_<30>P_<20>試験片が100MPaの応力負荷により分極した原因は,AD膜の粗さと厚さに起因して,塗装(P)膜に大きなひずみが発生し,P膜の,液に対する浸透性が増加したためであると考えられる.その結果.腐食液がP膜とAD膜の界面まで侵入し,さらにAD膜の多孔性により腐食液は母材表面まで達することにより,腐食ピットを生成したものと考えられる.
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