Research Abstract |
超微細粒銅を電気電子部品に使用するには,高寿命域の疲労強度を向上する必要がある.このためには,繰返しに対する組織安定性を増加することが重要である。21年度は,組織安定化を狙って, ECAPパス数およびECAPのルートを変化させ疲労特性を検討した.しかし,これらの変化による長寿命域の疲労強度の増加はほぼ同じか場合によっては減少する結果になった.そこで,多少の電気伝導率の低下は許容して組織安定化のために純度がわずかに劣る銅(99.95% Cu)を用いて研究を行った.その結果,疲労強度は高純度の銅(99.99% Cu)に比べ20%増加した.30%以上の疲労強度の向上を目指し,組織安定化のための160℃(3min)の回復焼なましを施した材料で実験したが,それ以上の増加は認められなかった. TEMにより組織を分析し,180℃の回復熱処理が静的強度は多少減少するものの長寿命域の疲労特性改善に有効な可能性が高い見通しを得た.これについては,次年度疲労試験を行い検討する.ところで,材料を実機に使用するには疲労寿命を精度よく予測する必要がある.前年度の研究から,超微細粒銅の場合も,平滑材の疲労寿命の大部分が微小表面き裂の進展寿命で占められることが示された.そこで,21年度は微小表面き裂の進展特性を検討し,進展速度(dl/dN)が下限界付近を除けば(dl/dN>10^<-6>mm/cycle),微小き裂伝ぱ則により近似的に評価できることを明らかにした.また,下限界の進展速度域において進展速度の変動が観察され,この原因を明らかにすることが寿命予測の観点からも重要であることから, SEMによる詳細な破面解析も併用し,その原因が繰返し塑性域寸法と結晶粒径との関係による進展メカニズムの変化の結果であることを明らかにした.
|