2009 Fiscal Year Annual Research Report
高速応答形状記憶合金マイクロアクチュエータ材料の開発とそのマイクロ加工技術の確立
Project/Area Number |
20560083
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
井上 尚三 University of Hyogo, 工学研究科, 教授 (50193587)
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Keywords | 形状記憶合金 / 薄膜 / マイクロアクチュエータ / スパッタリング / 通電加熱 |
Research Abstract |
形状記憶合金は、単位体積当たりの発生力と変位量が大きいことからMEMS用アクチュエータとして期待されている。しかし、その応答速度は数10Hz程度と遅いのが欠点である。応答速度の高速化には、(1) 変態温度の上昇、(2) 変態温度ヒステリシスの低減、(3) 温度以外の刺激による変態挙動の利用等が有効であり、(1)や(2)の実現のためにはTi-Ni合金へのPd、Zr、Cu等第3元素の添加が、(3)には磁場で変態する強磁性形状記憶合金が有望視されている。本研究では、スパッタリング法によって種々の組成のTi-Ni-X3元形状記憶合金を作製し、高速アクチュエータとして利用可能な素材を得るための成膜・熱処理条件を検討する。特に、従来殆ど行われていない通電加熱に伴う形状記憶挙動の定量評価が可能なシステムを構築し、より実用的な評価を取り入れることが本研究の大きな特徴である。 21年度は、前年度に製作した一定荷重下での通電加熱に伴う試料の動的な形状回復挙動を計測できる装置を用いて、種々のCu組成を持つTi-Ni-Cu三元合金の形状記憶挙動の評価を試みた。残念ながら、装置に不具合が発生したため十分な量のデータを蓄積することはできなかったが、応答速度の高速化に対して第3元素添加による効果はあることが確認できた。また、これらの実験と並行して、約15~25at%のCu組成を持つTi-Ni-Cu合金の形状記憶挙動に及ぼす熱処理温度の影響について評価した。その結果、400℃以上の熱処理により形状記憶挙動を示す素材を得ることができるが、熱処理温度が低くなると変態温度も低下してしまうことがわかった。しかし、従来700℃としていた熱処理プロセスを600℃程度まで低下させることができることが明らかとなった。このことは、将来この材料をMEMSプロセスに取り入れていくに当たっての有益な情報と言える。
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Research Products
(2 results)