2010 Fiscal Year Annual Research Report
イオンビーム援用超硬質cBN薄膜の作製と組成傾斜による内部応力緩和
Project/Area Number |
20560084
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
内田 仁 兵庫県立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30047633)
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Keywords | 機械材料 / 長寿命化 / 薄膜 / イオンビーム / 内部応力 |
Research Abstract |
本研究では、過酷環境下に対応し得る密着性に優れた超硬質保護コーティング膜の実用化を図るため、真空蒸着とイオン注入の融合したイオンビーム援用蒸着法により超硬質cBN薄膜を作製し、その最適成膜条件を基に、最終の平成22年度においては内部応力緩和を目指した膜設計基準を確立する。 得られた研究成果を纏めると、以下のように要約される。 1) 作製したBN薄膜は加速電圧の低下、輸送費の増加および基板温度の低下により結晶構造がhBN単相から(hBN+cBN)混合相へと変化した。BN薄膜に生じる圧縮の内部応力は、(hBN+cBN)混合相が形成される成膜条件において最大になり、BN薄膜に生じる内部応力は硬度と高い負の相関がある。 2) 種々の条件でBN中間層を挿入することによりその内部応力を低減することが可能である。特に、中間層がhBNである場合、硬度の低下も少なく、高い密着性と硬度を同時に実現できる。一方、中間層のB単体の含有量が増加させると、内部応力が緩和することができるものの硬度は逆に低下する。 3) BN薄膜に生じる内部応力の発生要因として、hBNからcBNへの結晶構造が変化していることから、ここではhBNの結晶構造に原子が侵入したモデルを対象に数値解析した。hBNの連続体モデルの各要素に生じる全方向のひずみ成分の絶対値を調べるとhBNの[0001]方向の垂直ひずみおよび剪断ひずみが大きな値を示し、薄膜に生じる内部応力を連続体力学と同様にひずみ量と弾性定数との関係で定義するならば、この連続体モデルの各要素に生じる応力はひずみ量の増加の増加と共に増加すると考えられる。 以上の研究成果より、基板上にhBNの中間層を積層させて超硬質cBN薄膜を作製すれば内部応力が緩和され、過酷環境下に対応し得る超硬質保護コーティング膜の実用化が期待できる。
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Research Products
(3 results)