Research Abstract |
今年度は,人工股関節ステムを模擬した種々のモデルを構築し,3次元有限要素解析によって,発生する応力を求めた.解析対象を,1960年代に前澤により開発され,優れた臨床成績を有する近位プレートを有するステム,カラーのみを有するステムの2種類のステムとした.モデルの構築には既存の人工股関節ステムの外形に補正を加え8接点6面体要素により作成した.ステムの材料特性として,質量密度,弾性係数,ポアソン比を,それぞれ4510kg/m3,110GPa,0.29GPaとした.大腿骨モデルは成人右大腿骨のCT画像を基に自動メッシュ生成を行い,手作業で補正を加えることにより構築した.弾性係数は皮質骨15.5GPa,海綿骨1.00GPa,ポアソン比は皮質骨0.30,海綿骨0.33と仮定した.解析システムを,本予算で購入したワークステーション(Endeavor Pro-4500, EPSON)に動的三次元有限要素法解析ソフトウエア(LS-DYNA Ver.971, Livermore Software Technology)を組み込んで構築した.荷重条件として,人工股関節の耐久性試験で定められているISO7206に基づき,長軸方向に対して25度の角度で,骨頭頂部に1800Nの圧縮力を負荷した.ステム,大腿骨,プレート相互間の接触部でのすべり(摩擦係数0.3)を仮定した.解析の結果,破壊基準として一般に用いられているvon Mises相当応力は,プレートを有するステムの近位内側において11.3MPa,近位外側において14.2MPaだった.カラーのみを有するステムでは,近位内側において15.6MPa,近位外側において19.5MPaであった.よって,プレートの効果によりvon Mises応力が低下することが明らかになった.
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