Research Abstract |
本研究では,鏡面研削を熟練技能者に頼ることなくスキルフリーで実現するための具体的方法の提案を目的としている.平成22年度は,このために必要不可欠な砥石作業面における連続切れ刃間隔の定量化手法とその妥当性の検証を中心に検討を行った.得られた主な成果は,大きく以下の2点である.(1)砥粒の代表形状を考慮した連続切れ刃間隔の同定法の確立,および,(2)その同定結果の妥当性の検証,である.(1)に関しては,前年度までに確立した砥粒切れ刃密度および実効切れ刃層深さの同定法を基礎として,さらに砥粒形状を考慮することにより,同一線上を切削する有効切れ刃数を定めて,連続切れ刃間隔を定めることを可能にしている.このために,砥粒の代表形状として,正8面体および球形を取り上げ,特に前者に対しては砥粒の方位の影響を統計的に取り扱う方法も考案している. また(2)に関しては,作業面における砥粒の分布状態を研削仕上げ面に転写し,その表面トポグラフィを解析することにより,作業面上に存在する有効切れ刃数を定めて,前述の作業面プロファイルから定めた有効切れ刃数との整合性の評価を試みている.実験に際しては,作業面に影響を及ぼしにくく,なおかつ,作業面の切れ刃分布の転写性に優れる純銅を工作物とし,平面研削加工実験を行っている.その結果,砥粒の代表形状としては8面体よりは球形とした方が,有効切れ刃数が近い値となることがわかり,実際の砥粒が球形に近い鈍った形状と考えるべきであることが確認されている. 以上の検討により,インプロセス計測可能な作業面プロファイルおよび研削抵抗に基づいて,連続切れ刃間隔を精度よく定められるようになり,研削加工を,あたかも切れ刃がランダムかつ多数のフライス工具を用いた切削加工のように,すなわち統計的にではなく確定的にモデル化できるようになり,仕上げ面の表面トポグラフィが正確に予測可能になっている.
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