Research Abstract |
ねじ部品の疲労強度の推定には,ねじ転造によって生じるねじ谷底の圧縮残留応力を考慮した設計手法の確立が必要であるが,ねじ谷底の極めて狭い領域に集中する残留応力分布を正確に測定することは困難であるため,従来提案されていた仮説を定量的に検証するまでには至っていない.そこで本年度の研究では,前年度の残留応力測定の取組みに加え,予荷重を作用することによってねじ谷底に局所的な残留応力を発生させ,その値を二次元軸対称FEM解析で推定し,疲労試験結果をもとに仮説の検証を試みた.実験では,一定の残留応力を付加するため,M10×1.25の山形をもつリードのないボルト状試験片を制作し,これと二つ割アダプタとの組合せについて,実験と解析を行っている. 予荷重によって発生する圧縮残留応力の値は,表面で最大650MPa程度に達するが,内部では急激な減少が起こっており,疲労強度に関係するといわれる30μm内部の領域では,アダプタの第1山が完全山の場合,約220MPa,1/4山の場合約190MPaとなった.予荷重の有無,及び第1山の形状2種類について,平均荷重の低いR_s=0.1の条件で疲労試験を行ったところ,予荷重を与えたものの疲労強度が増加し,第1山が完全山の場合に最も高い値を示したが,疲労限度の荷重条件を基に,FEM解析によって求めた局所的応力の振幅は,いずれの場合も平滑試験片の疲労強度の1/2程度であった.現段階で,この原因としては,二つ割部の応力集中,及び試験機の構造に起因する曲げ応力の発生が考えられるが,それを明らかにするためには,さらなる実験と解が必要である.
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