Research Abstract |
本研究では,火炎伝ぱにより圧縮される未燃予混合ガスでの自着火発生メカニズムならびにスス生成メカニズムを詳細に把握することを目的としている.そのため,1回だけの燃焼が可能な圧縮膨張機関により,火炎伝ぱにより圧縮される未燃予混合ガスでの自着火部を高速度カラーカメラで可視化し,自着火の様子を観察した.また,分光器により局所自発光を計測し,スス燃焼による輝炎発光を観察した.ここでは,まず燃料成分の違いに着目し,燃料中の芳香族炭化水素成分割合を変化させ,ノッキング時のスス生成に与える影響を可視化および分光計測により調査した.これにより,以下の知見を得た.(1)直接撮影により正常燃焼時にはないスス発光がノッキング発生時には観察され,潤滑油の存在しない領域からもスス発光を確認した.(2)ノック強度の増加と共に,スス発光強度(670-690nm)は増加する傾向にある.(3)芳香族炭化水素割合が増加すると,スス発光強度(670-690nm)は増加する傾向にある. さらに,水素を燃料として同様の機関により自着火を発生させ,ノッキング時に生じる圧力波の様子を観察した.これより,(1)未燃予混合ガス部で自着火が発生すると,水素を燃料とした場合でも輝炎が発生する.(2)自着火する直前の未燃予混合ガス部の質量が多いとノッキング強度は強くなる.(3)撮影速度250kfpsの高速度カメラを用いることで,ノッキング時に生じる圧力波を可視化できた.シリンダ端部で生じた圧力波は,シリンダ壁間を往復し,圧力波に振動を生じる.また,圧力波が生じることで,シリンダヘッドやピストントップに生成されている温度境界層を破壊し,温度境界層に含まれるエンジンオイルを燃焼させる.このオイルが燃焼することで,ピストントップやシリンダの温度が急激に上昇し,破壊する原因になる.
|