Research Abstract |
低燃費と低公害を両立させた環境調和型の次世代自動車エンジンとして,予混合圧縮着火(HCCI)燃焼が注目されている.しかし,HCCIエンジンでは自着火現象を利用するため,着火時期の制御が困難であることが,実用化を妨げる最大の課題となっている.この課題を克服するためには,幅広い実験条件で着火時期を予知する技術の確立が必要であり,そのために15~60気圧のHCCI燃焼条件下で適用可能な包括的な燃焼反応モデルの構築を目指す.研究2年目である本年度は,次の研究を実施した. 1. イソオクタンおよびトルエンの高圧着火反応モデルの改良 イソオクタン着火については,従来の反応モデルにイソブテンの酸化反応機構を加えることにより,広い温度・圧力・濃度範囲で実測値を再現することに成功した.しかしながら,トルエン着火については実測を十分に再現するには至らかった.そこで次年度は,着火を支配する重要な素反応速度データの妥当性を実験的・理論的に検討し,ミクロな観点より反応モデルの改良を行う. 2. その他のガソリン成分の高圧着火特性の実験的評価と反応モデルの構築 初年度のヘプタン,イソオクタン,トルエンに引き続き,ペンタンおよびベンゼンについて高圧衝撃波管を用いて着火実験を行った.実験結果をもとに,次年度反応モデルのさらなる改良を行う. 3. 2成分炭化水素燃料の高圧着火特性の実験的解明 ヘプタン,イソオクタン,トルエンのうち,2成分混合燃料の高圧着火特性を広い温度・圧力・濃度範囲で実験的に調べた.本年度イソオクタン着火の反応モデルが劇的に改善されたのに起因して,ヘプタンーイソオクタン混合燃料の着火は計算によってかなり精密に予測可能となったものの,トルエンを含む混合燃料の着火時期予測は未だ改善の余地が残る.次年度はトルエン単体での反応モデル改良を最優先に行った後,トルエン混合燃料の着火予測を再チャレンジする.
|