Research Abstract |
(1)低燃費と低公害を両立させた環境調和型の次世代自動車エンジンとして,予混合圧縮着火(HCCI)燃焼が注目されている.しかし,HCCI エンジンでは自着火現象を利用するため,着火時期の制御が困難であることが,実用化を妨げる最大の課題となっている.この課題を克服するためには,エンジン内の着火時期を広い温度・圧力・濃度範囲で予測できる反応モデルの構築が不可欠である. (2)あらゆるHCCI 運転条件で着火を予測できる包括的な反応モデルを構築するには,高圧での炭化水素燃料の自着火特性を調べる必要がある.そのための装置として,急速圧縮機(Rapid Compression Machine,RCM)が古くから存在するが,反応部の温度は空間的・時間的に均一ではないため,正確なデータは得られない. (3)そこで本研究では,瞬時に加熱・冷却が可能で,温度が均一で見積もりが極めて正確な衝撃波管を用いる.しかし,通常の化学衝撃波管は大気圧付近を対象実験条件としているが,本研究ではHCCI 燃焼条件に合わせて耐圧100気圧の高圧衝撃波管を新たに製作する.また,高圧部の長さを延長することにより,長い加熱持続時間の獲得を目指す. (4)以上の高圧衝撃波管を用いて,ガソリン燃料成分である炭化水素の高圧における着火特性を評価する.定量的尺度として着火誘導期を測定し,提唱した詳細反応モデルを用いて着火誘導期のシミュレーション計算を行い,実験結果と比較・検討する. (5)幅広い温度,圧力,濃度範囲において,実験と計算の比較・検討を繰り返し行うことにより,反応モデルの最適化を図る.反応モデルにおいて,鍵を握る反応経路および速度データに関しては,時間分解分光法あるいは生成物分析によって実験的に解明・決定する.また,現在の実験技術では追跡することのできない反応経路および速度データは,非経験的分子軌道法を用いた量子化学計算により,理論的に研究・解明する. (6)以上のようにして,ガソリン成分である代表的な炭化水素の着火について,15~60気圧のHCCI燃焼条件下で適用可能な包括的な燃焼反応モデルの構築を目指す.
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