Research Abstract |
ディラック構造は,シンプレクティック構造とポアソン構造を一般化した概念であり,元々,退化ラグランジュ系のためのディラックの拘束理論と関連して考案されたものである.ハミルトン力学と関連して,陰的なハミルトン系の枠組みが導入され,非ホロノミック系や回路系への応用が示された.ラグランジュ力学との関連では,申請者等によって,ディラック構造と陰的なラグランジュ系の枠組み提案され,拘束を受ける退化ラグランジュ系として回路や非ホロノミック系への応用が示された.さらに,ディラック構造と変分原理の関係として,ハミルトン・ポントリヤーギン原理から標準的なラグランジュ・ディラック系が導かれることが解明された. 平成21年度は,リー・ディラック簡約をもとに,非圧縮性流体力学の基礎となる,移流パラメータに依存するラグランジアンとそれを用いたハミルトン・ポントリヤーギン原理による定式化を行った.すなわち,リー群上のハミルトン・ポントリヤーギン原理とディラック構造について調査し,特に,リー・ディラック簡約の理論によって,ラグランジュ・ディラック系及びハミルトン・ディラック系の簡約化が統一的に理解できることを示した.また,その発展として,ラグランジアンが移流パラメータに依存する場合のハミルトン・ポントリヤーギン原理とその簡約化の方法を示した.最後に,非圧縮性理想流体を例に,移流パラメータを持つ陰的なオイラー・ポアンカレ方程式の枠組みによってダイナミクスの定式化を行い,リー・ディラック簡約の有効性を示した.
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