Research Abstract |
本研究課題では,多指ロボットハンドによる高度な操りを目指して,複数対象物把握系の安定性を解析した.そして,次の研究成果を得た.(1)二次元平面内で各指を二次元直交ばねでモデル化した場合について,放射状に配置された複数対象物を把持した場合を解析し,把握系の剛性行列を導出した.この行列の固有ベクトルにより変位モードが得られ,固有値によりそのモードの安定性が評価できる.提案手法の妥当性を数値例により確認し,人間の直感に一致することを示した.Open Dynamics Engineを用いて三対象物把持の変位モードを可視化した.これにより,把持対象物と指の変位が明確になり,各モードの妥当性が直感的に判断し易くなった.三対象物が相互干渉する把持を解析し,全ての接触点が滑る場合には6行6列の剛性行列を,転がる場合には3行3列の剛性行列を導出した.(2)三次元空間内で各指を三次元直交仮想ばねでモデル化した場合について,接触点近傍の2方向の主曲率が既知の場合の二対象物把持を解析した.曲面の幾何学(計量テンソル,曲率,捩率)を考慮して単一対象物の把持を解析した.(3)指先が回転することによる安定性への効果を明らかにするため,指リンクを考慮し,関節に回転仮想ばねを設定して解析した.回転関節の場合,拘束条件が非線形になるため複雑になるが,この問題点を解決した. 提案手法は,接触点に摩擦が有る場合には転がり接触の拘束条件を,無い場合には滑り接触の拘束条件を考慮して各指の剛性行列を導出している.このため,摩擦が有る接触点と無い接触点が混在する把握系についても安定性を評価できる.剛性行列を解析的に導出しているため,把握パラメタ(接触点位置,向き,曲率,指先力,摩擦の有無)が安定性に与える効果を陽に評価できる.
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