Research Abstract |
既存の対抗ターゲット式直流スパッタ装置で,回転式基板ホルダーの改良,Cu及びInターゲットの設置,ガス供給配管付加などの改造工事を施した。この工事により,二硫化炭素CS_2もしくは有機硫黄Ditertiarybutylsulfide(DTBS)の反応性ガス供給量を制御しながら,各ターゲット前の基板停止滞在時間を制御してCuとInを交互に原子層オーダーで堆積可能なスパッタ装置を構築できた。この装置を用いて,反応性ガスCS_2雰囲気中で様々な[Cu]/[In]比の薄膜を作製した。薄膜の組成は,高CS_2ガス分圧の場合では(Cu_2S,Cu_<1.96>S)-(CuInS_2)-(CuIn_5S_8)-(In_2S_3)擬固溶体系に,低CS_2ガス分圧の場合では(Cu_2S,Cu_<1.96>S)-(CuInS_2)-(InS,In_5S_4)擬固溶体系に対応して変化した。X線回折結果では,Cu-richの領域でCu_<1.96>Sが僅かに混在するものの,CuInS_2が支配的であり,化学量論組成近傍でCuInS_2のみが現れた。一方,In-richの領域のX線回折結果では,高CS_2ガス分圧でCuIn_5S_8が支配的で,低CS_2ガス分圧でInS及びIn_5S_4が現れた。CuInS_2の化学量論組成に対応した薄膜は,p形伝導を有し,X線回折で異相が観られなかったことに加え,その基礎吸収端がCuInS_2の禁制帯幅に対応していた。DTBSガス雰囲気中での薄膜作製も試みているが,まだCuInS_2薄膜は作製できていない。今後,DTBSガス供給条件を変化させて薄膜堆積を行い,CS_2ガスの場合と比較検討を行う予定である。一方,基礎的物性データ取得のため多元蒸着法を用いてGaP基板上で種々の[Cu]/[In]比を有するCuInS_2薄膜を作製し,ややCu-rich組成でс軸方向成長の高品質エピタキシャル薄膜が得られることがわかった。
|