Research Abstract |
電波と赤外光との間に位置するサブミリ波領域には,高出力が得られる実用的な光源が存在しないという状況が続いてきたが,ジャイロトロンの高周波化が進展し,有効な光源としてその存在感を増しつつある。しかし,連続的な周波数の掃引が求められる実験では,たちまち,ジャイロトロンは有効な光源にならなくなる。というのは,ジャイロトロンの周波数は高いQ値を持つ共振器によって決められ,一つの動作モードで掃引できる範囲は数10MHz程度に限られるためである。本研究の目的は,ジャイロトロンにおいて広帯域に亘って周波数を掃引できる機能を実現し,周波数掃引が求められる重要な応用に適用することである。 福井大学においてGytotron FU CW IVを設計・製作し,詳細な動作試験を行ったところ,周波数134Hzの発振において,磁場強を変化させると,発振出力は変化するものの,数GHzに亘って周波数を連続的に掃引できることが分かった。発振出力も数Wから数10Wと高出力が得られた。このような周波数掃引は,周波数131GHz付近の発振においても実現されることが分かった。 ESR現象とNMR現象をリンクさせて,NMR測定の感度向上を図ることができるDNP-NMR測定法は,蛋白質の構造解析手法として,注目されている。有効なDNP-NMR測定のためには,電子スピン共鳴周波数前後において,照射電磁波の周波数を核磁気共鳴周波数の2倍以上に亘って,連続的に変化させる必要がある。周波数131GHzの発振は,200MHz DNP-NMR測定に求められる周波数の掃引範囲をカバーしていることが分かった。そこで,200MHz DNP-NMR測定への応用に取り組むことを検討した。現在,その準備を進め,間もなく測定に着手できるところまで到達している。
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