Research Abstract |
今年度は,仮想アレーを用いた校正手法,および拡張位置指紋法に関して,ともにシミュレーションによる定量特性の解析を進めるとともに,それらの基礎的な実証実験を行った.具体的には,仮想アレーの概念を用いたキャリブレーションにおいては,当初,キャリブレーションデータの増加効果をもたらすICA処理との統合を目的としていたが,検証実験により,校正行列推定精度の安定性に問題があることが判明したため,シミュレーションにより,仰角方向参照データの角度数に関する評価を行った.その結果,方位角方向同様,(仮想)素子数+1で正則条件を満たすことを明らかにした.また,端末位置推定アルゴリズムに関しては,前年度は送信1素子端末の位置推定に関して検討したが,今年度はMIMO端末への適用を踏まえ,マルチアンテナ端末時の推定規範に関して検討し,効果的な評価式を明らかにした.なお,今年度は金属パーテションで仕切られた部屋の実伝搬データを用いた検証実験も行った.その結果,コンクリート壁を想定した場合に比べ,約1.5倍程度,推定精度が劣化することが分かった.これは壁面の反射係数が大きなことに伴うマルチパス波の増加が原因であり,その影響を明らかにするため,シミュレーションによる壁面素材と推定精度の関係に関する定量的考察も行った.これらの結果を踏まえ,既にアルゴリズム改良に関する知見が得られており,来年度は,その改良手法を検討し,実伝搬環境において,前述の仮想アレー校正法を融合した,統合的な無線端末位置推定手法を確立する.
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