Research Abstract |
本研究は,非線形力学理論の分野における結合カオス系の集団同期現象の研究を基礎に,実システムにおいて生じるサブシステム間の情報伝送遅延を考慮した集団同期現象の解析と,その知見の制御工学への応用を目指している.伝送遅延と結合強度パラメータにより,結合ネットワーク系は完全同期や部分同期,位相同期といった現象を生じる.そこで,本研究では,情報伝送遅延により生じるむだ時間と結合強度をパラメータとした遅延結合ネットワーク系の完全同期・部分同期の制御手法を導出し,システム全体のパターン形成の手法を開発することを目的としている.そのために,二つのサブテーマに従って研究を実施しているが,本年度は,(ii)遅延結合システムの部分同期におけるクラスタリングとパターン生成のための制御則の検討を中心に実施した.特に,非線形振動子の遅延結合ネットワークの動的挙動の解析手法を検討し,調和平衡法に基づく振動パターンの解析およびパターン設計法を導出した.さらに,Lorentz回路,Chua回路の遅延結合ネットワークを回路を用いて実現し,実験による同期条件の検証を行い,安定論に基づく同期条件の検証を行うとともに,ネットワーク構造と同期条件に関する新たな洞察を得ている.また,非線形システムの遅延結合ネットワークの同期現象の工学的応用として,ネットワークによる情報遅延を受ける移動ロボットの協調制御問題を考え,同期現象を用いた遠隔同期制御手法を提案し,オランダ-日本間での遠距離通信ネットワークを用いた実験による検証を行い,その有効性を確認している.これらの結果については,22年度開催の国際会議に投稿し,採録が決定している.
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