Research Abstract |
平成20年度の検討結果により,ひび割れ導入時期およびひび割れ幅によらず,乾湿繰返し環境下では,ひび割れからの中性化進行がほとんど確認できなかった.この実験事実を理解し,知識の体系化をするためには,ひび割れ内部の水分挙動を把握する必要があると推察され,平成21年度は,ひび割れ幅,含水率,乾燥条件を要因として,実験的な検討を行った.設定した条件は,ひび割れ幅0,0.2,0.5mm,水分供給方法(降雨暴露と水中浸漬),乾燥条件(20℃,40℃)である. 実環境では,水は主に降雨によって供給されると考えられる.そこで,水中浸漬の場合の吸水特性と,降雨時に屋外に曝露した場合の吸水特性を比較した結果,両者の吸水特性はほぼ同じであることが確認でき,水中浸漬試験で降雨を模擬することの妥当性を検証した.ひび割れの吸水特性は,水中浸漬を行った場合,急速にひび割れ内に水分が侵入し,20時間程度でひび割れによらず90%以上の含水率となり,0.2mm幅は20時間,0.5mm幅は150時間程度で飽水状態となることが明らかとなった. 吸水試験の結果をもとに,含水率30,60,90%の供試体を作成し,乾燥機(40℃,RH45%)による水分逸散試験を行い,それぞれの経時的な質量変化を計測した.その結果,初期含水率に変化がある場合にも,水分の逸散挙動はあまり変わらず,400時間を過ぎるとひび割れ幅によらず含水率10%を下回り,400~500時間の間にひび割れ内の水分は概ね完全に逸散することが分かった. 以上の実験結果に基づき,平成22年度は乾湿繰返し条件を設定し,再度,ひび割れからの中性化が進行する条件を明かとする予定である.
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