Research Abstract |
本研究の目的は,広範な粒度を有する砂礫混じり堤防材料の変形・強度特性を評価する手法を提案することと,慣用解析で用いる強度定数の合理的かつ経済的な設定法を示すことである。平成21年度は,実在堤防から採取した砂礫試料を用いて室内三軸試験により詳細な検討を実施した。大きな礫から細粒分まで含む河川堤防土について,原粒度のままの堤防材料の変形・強度特性を求めるには,大型三軸試験を行うのが理想であるが,現実には,試料確保の面やコスト面から,大きな礫を除外した粒度調整試料を用いて室内小型三軸試験を実施することになる。本年度は,まず原粒度試料の大型三軸試験を実施することにより,供試体乾燥密度と排水条件が試験結果に及ぼす影響について検討した。さらに,粒度調整した小型三軸試験も実施し,供試体寸法の効果についても検討した。大型および小型三軸試験の結果を比較すると,同じ供試体乾燥密度であっても,供試体の寸法効果によって,小型三軸試験で得られる試験結果は密詰め傾向の変形・強度特性を示すことがわかった。これは,大きな礫を含む原粒度試料では,礫以外のマトリックス部分の密度が相対的にゆる詰めであるのに対して,小型供試体のマトリックス部分は逆に相対的に密詰めになることに起因する。そのため,砂礫試料では供試体が小型化するほど,実際の強度変形特性を過大評価する可能性を指摘した。また,大型軸,小型三軸ともに,CD試験で得られるφ_dとCU試験で得られるφ'は,供試体乾燥密度が大きい場合にはほぼ同じになるが,供試体乾燥密度が小さい場合には差が生じることが示された。さらに,本論文で提案する礫分含有率を変えない粒度調整を行うことで,小型三軸で得られる変形・強度特性は,大型三軸の結果に近づくことも示された。
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