Research Abstract |
平成20年度の研究では,自由長周期波と見なされている長周期波が,自然界に存在する風速変動や気圧変動により共鳴して生じているのではないかとの仮説に立って,自然風の気圧と風速変動の観測を行い,その特性を明らかにすると共に,風洞水槽において風波の有義波周期の数倍の変動風速を発生させて,長周期波が気圧と風速変動のどちらに共鳴して発生・発達しているかを調べた.その結果,自然風の観測では,気圧および風速変動のスペクトルは,1/fに近いほぼ相似的な関係で減衰していることが分った.このことより,風速変動の低周波数に大きな振幅を有していることが分った.また,長周期波と風速変動とはほぼ同位相であり,波形も類似していることが分った.また,風速変動と気圧変動は逆位相に近いことも明らかとなった.風波および長周期波へのエネルギー供給を詳しく調べるために,気圧変動と水位変動のクオドスペクトルを算定したところ,風波成分には気流からエネルギーが輸送されているのに対して,長周期波成分では逆に気流に対して仕事をしていることが分った.このことは他の変動風速の場合においても同様であり,長周期波は気圧変動に共鳴して発達しているのではなく,変動風速に共鳴して発生・発達していることが分った,すなわち,変動風速により海面摩擦応力が変化し,それに伴って長周期波の水位勾配が共鳴して変化するために,長周期波の運動量が増大することによって発達しているものであると考えられた. 平成20年度の後半には,長周期波浪系に短周期波浪が外力として作用する確率論的ゆらぎモデルを開発し,それを理論的に解析することによって,長周期波高と短周期波浪のスペクトルや波浪諸元との関係を見出すことに成功している.その結果,長周期波のパワーは,短周期波浪のスペクトルモーメントm_<-2>に比例し,m_<-2>=m_0m_<-2>/m_0なる関係を用いると,有義波高H_<1/3>および卓越周期T_pとの関係が得られた.
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